末期心不全(心不全の終末期)においては、咳、痰が多くでて、呼吸が苦しくなることが度々あります。そのようなときにどのようなアプローチが良いのか、薬物的(お薬)、非薬物的(自宅や看護者、介護者ができること)にわけて覚え書を記しております。
1. 薬物的アプローチ
1. オピオイド
• 低用量のモルヒネが効果的です。呼吸中枢への作用で咳反射を抑え、呼吸困難の軽減にも寄与します。
• 例: モルヒネ 2.5〜5 mgを1日2~4回投与
• 【注意】呼吸抑制や便秘の副作用に配慮が必要です。
2. 鎮咳薬(咳止め)
• コデインやジヒドロコデインを使用しますが、オピオイド系のため依存や便秘に注意が必要です。
• デキストロメトルファンは非オピオイド系の鎮咳薬で、比較的副作用が少ないです。
3. ACE阻害薬やARBの調整(降圧薬)
• ACE阻害薬(例えばエナラプリル)が咳を誘発することがあるため、ARB(アンギオテンシンII受容体拮抗薬)への変更も検討します。
4. 吸入ステロイドやβ2作動薬
• 気管支収縮が原因の咳の場合、吸入ステロイド(フルチカゾンなど)やβ2作動薬(サルブタモール)が有効です。
2. 非薬物的アプローチ
1. 体位管理
• 頭を高くした体位(45°~60°のセミファウラー位)をとることで肺うっ血を軽減し、咳を和らげることができます。
2. 酸素療法
• 低酸素血症がある場合、酸素投与で呼吸苦と咳を軽減します。ただし、酸素が過剰になると逆効果になる場合もあるので注意が必要です。
3. 湿度管理と蒸気吸入
• 加湿器や蒸気を吸入することで気道の乾燥を防ぎ、刺激性の咳を抑えます。
4. 心理的サポート
• 不安やストレスが咳を悪化させることもあるため、リラクゼーション法やカウンセリングが有効です。
5. 水分管理
• 過剰な水分は心不全を悪化させますが、適度な水分補給は痰の排出を促進します。
6. 口腔ケア
• 口の中の乾燥を防ぐために、うがいや保湿剤を使い、刺激による咳を予防します。