本態性高血圧について

本態性高血圧は明確な原因が特定できない高血圧(一般的な高血圧)で、複数の要因が関与しています。

高塩分食: 塩分の摂取が多いと、体内のナトリウム濃度が上昇し、腎臓での水分再吸収が増加します。これにより血液量が増加し、血圧が上昇します。また、ナトリウムはRAAS(レニン-アンジオテンシン-アルドステロン系)を活性化し、血管収縮を促進します。
肥満: 体重が増加すると血液の流れを支えるために心臓がより多くの血液を送り出す必要があり、これが血圧を上昇させます。さらに脂肪組織からのサイトカイン(免疫や炎症の調整・制御をおこなう生理活性物質)がRAASを活性化し、血圧を上昇させる要因となります。
運動不足: 運動不足は心血管の健康を損ない、血圧を上昇させる要因となります。定期的な運動は心臓のポンプ機能を改善し、RAASの過剰な活性化を抑えることができます。
ストレス: ストレスがかかると交感神経が活性化し、心拍数や血圧が上昇します。また、ストレスによるホルモンの変動もRAASを刺激し、血圧を上げる要因となります。
その他: 遺伝的要因や年齢、性別も本態性高血圧に影響を与えます。特に遺伝的素因は、RAASの調節能力に影響を及ぼすことがあります。

これらの要因は相互に関連しており生活習慣の改善が高血圧の管理において重要です。RAASは高血圧のメカニズムにおいて中心的な役割を果たしており、RAAS系をターゲットにした薬(ACE阻害薬、アンギオテンシンⅡ受容体拮抗薬など)が処方されることがあります。

RAAS系の説明
    • He, F. J., & MacGregor, G. A. (2004). “Importance of salt in determining blood pressure: conclusions from the trials of hypertension prevention.” Journal of Hypertension, 22(4), 737-740.
    • Wang, Y., & Beydoun, M. A. (2007). “Influence of overweight and obesity on medical expenditures in the United States.” Obesity Reviews, 8(3), 211-222.
    • Pescatello, L. S., et al. (2015). “Exercise and hypertension: recent advances and future directions.” American Journal of Hypertension, 28(2), 165-172.
    • Chrousos, G. P. (2009). “Stress and disorders of the stress system.” Nature Reviews Endocrinology, 5(8), 436-445.
    • Fuchs, F. D., & Campos, R. M. (2010). “Epidemiology of hypertension.” Journal of Hypertension, 28(7), 1439-1448.